小説

2013 年上半期に読み終わった本

  • 終電へ三〇歩(赤川次郎)……リストラされた係長が、DV に悩む主婦の話を聞く。トランクに遺体を入れたまま食事をした男は、車を盗まれる。さまざまな思惑を持った他人同士が交錯するドラマ。
  • スクウェア《Ⅰ、Ⅱ》(福田和代)……薬物対策課の刑事である三田は、仕事帰りの一杯が息抜き。店と妙な関係が出来ないよう、馴染みの店は作らない主義だったが、路地の行き止まりにある店の居心地が良く、何度も訪れる。しかしそこのバーテンダーには薬物の影が……。敵対しつつも時には助け合う奇妙な関係ができていく。

  • 水底フェスタ(辻村深月)……東京でモデルになった由貴美が、ロックフェスで村おこしをしている村に帰ってきた。村長の息子である主人公は由貴美に惹かれるが、由貴美が帰ってきたのは、村長選挙の不正を暴き村に復讐するためだと言う。由貴美に協力することにした主人公は、やがて、由貴美の目的がさらに別の所にあることを知る……。

  • 二十一日モグラと聖人たち(金木犀)……囚人として牢にとらわれている主人公は、実は世界を救うための聖人だった。モグラの協力を得て他の聖人を探し出すも、説得に失敗する一人と一匹。実は、説得には鍵が必要なのだが、期限はたった 21 日。雨のない国に、奇跡の恵みを降らせることが出来るか!?

  • ハロワ!(久保寺健彦)……ハローワークにはさまざまな人が訪れる。真面目に職を探す人もいれば、おしゃべりに来てるだけの人も。そんな人々のために、真剣に職を探す主人公の奮闘記。

  • 魔導師の月(乾石智子)……悪意の塊である「暗樹」は、見た目はただの樹の切れ端。しかし、言葉巧みに人の心に取り入り、ついには帝国の中枢に到達。帝国は次第にむしばまれていく。暗樹の悪意に気づいた 2 人の魔道師を追う。

  • 限界集落株式会社(黒野伸一)……金融のプロである主人公は、息抜きのために田舎に帰ってきた。過疎の村で村人と触れ合ううちに、村を何とかしたいという思いを募らせる。農業はビジネスとして難しい。それを熟知するプロが、あえて、農村改革に乗り出した。実務のプロとコンビを組んで起業するも、村人の協力を得ることすらままならない状態で、農村の未来はどうなるのか!?

面白かったのは、スクウェア、水底フェスタ、限界集落株式会社。



【 読み終わった本シリーズ 】

2012 年下半期に読み終わった本

【読了分】
  • 夜の写本師(乾石智子)……育ての親を殺したのは、最強の魔道師。復讐を誓うも、魔道師としての実力で勝てるはずも無い。そんな主人公カリュドゥがたどり着いたのは、写本師と呼ばれる魔道書を生産する仕事。それも裏の。本に魔力を込める搦め手からの戦略は実るか。
  • 勇者「パーティーにまともな奴がいない……」(Web 小説)……血統だからと無理矢理魔王討伐に出されてしまった勇者。旅を進めていくと、村でドラゴンが捕らえられていた。ドラゴンが無実だと知った勇者は、ドラゴンを逃がしてしまう。後日、女の子が勇者のパーティーに加わるが、なんと彼女は、人間に転生したドラゴンだった……。
  • 姜維伝(小前亮)……諸葛亮亡き後、蜀を軍事面で支えた姜維。双子の兄妹を弟子にとり、彼らを育てながら蜀を守っていく。遠征の許可が下りないもどかしさ、滅亡寸前まで策を巡らす忠義心……。敵将である鄧艾や鍾会の描き方によって物語が引き立っている。
  • 窓際 OL トホホな朝ウフフの夜(斎藤由香)……某飲料メーカーの OL が人事異動で精力剤の PR を担当することに。日常業務がきわどいネタであふれかえる。重めの話でも面白可笑しく読めてしまう!?
  • ゲート《外伝》(柳内たくみ)……異世界との門が閉ざされた後も、異世界に残る決意をした伊丹。帝国皇太女と共に外交使節団の任務を遂行中、船が座礁してしまう。突然のサバイバル生活が始まる。生きるだけでも大変なのに、海賊として皇太女を亡き者にしようとする勢力からも逃げなくては……。様々な種族と交流しつつの逃避行。
  • 星間商事株式会社社史編纂室(三浦しをん)……閑職である社史編纂業務を遂行中にかぎつけた、社史の空白期間。何か秘密が隠されている! 圧力をかわしながら、裏社史としての同人誌発行をもくろむ。詳しくはこちら
  • ここはボツコニアン《1、2》(宮部みゆき)……長靴鑑定士に、「この長靴は……伝説の勇者の証!」などと適当なことを言われて、勇者の旅に出たピノ&ピピの二人の兄妹。トンデモ設定なのは、ボツネタでできている世界だから。フライ返しを片手にお城の地下にお弁当を届けに行ったり、名物スイーツ店の謎を追ううちに郭嘉の幽霊に出会ったり……。



【 読み終わった本シリーズ 】

鏡職人、畑を耕す

鏡職人の朝は、早くないことも多い。太陽が出ていないと鏡の力を活かせないからだ……。

QBK(急に文章を書きたくなったので)、小説っぽいものを書きはじめてみた。

相変わらず作業の遅い自分のことなので、設定を少し考えるだけでだいぶ時間が経ってしまった。


登場人物の名前はありふれたもので、特に意味も無いのだが、名前を探す際は、OS の名前を眺めながら決めた。アンドリューは Android だよ。

『星間商事株式会社社史編纂室』読了

『星間商事株式会社社史編纂室』 三浦 しをん(著)/筑摩書房(刊)

同人誌を作ろう!

突飛な提案が、現実になっていく。

主人公は左遷されて配属になったのは、会社設立 50 周年を記念した社史の編集業務。

同僚たちもみんな訳ありのようだが、どうにも士気が低い。そもそも、会社は既に 60 周年……。ずるずるとスケジュールが遅延しているが、周りを叱咤して真面目に(普通の社史の)編集を進めていく。

そんな折、社史の中に空白の時期があることに気づく主人公。この時期だけは、生き証人達がみな口をつぐんでしまうのだ。挙げ句、どこからともしれない圧力までかかってくる。

そういう妙なところがあると、かえって燃えるのが人情というもの。どうやら、一人の女性の物語が隠されているらしい。

圧力に屈すると見せかけて社史の編纂を続ける一方で、裏社史を同人誌として編纂していく。サリメニという小さな国を舞台にした出来事を調べ、同人誌のストーリーに昇華させていく。

監視の目が次第に厳しくなる中、裏社史の行方はどうなる!?



自分が本を選ぶ時、作家ではなくタイトルで選ぶことが多い。

今回は、フォロワーさんに社史編集の仕事をしている人がいて、気になったので読んでみた。

想像していたのとは全然違う内容だったが、いろんな意味で二重三重に絡み合う物語の展開が巧みな一冊だった。



2012 年上半期に読み終わった本

【読了分】
  • 任侠病院(今野敏)……地域医療を担う病院が暗く冴えないのは、出入り業者があこぎな暴力団だったから。そんな病院の再生を目指すため、 あこぎな広域系暴力団に立ち向かうのは、地域と共に生きてきた弱小暴力団。外では巨大な組織、内では住民の感情、内憂外患を抱えながら、病院経営ド素人が 奮闘する。
  • 民王(池井戸潤)……総理大臣と馬鹿息子が突然入れ替わってしまった。突然の総理大臣役という無茶ぶりに右往左往する息子。国会答弁で秘 書のメモを読み上げるも、漢字が読めない。一方、総理大臣の父親は、就活でやたら偉そうに受け答えをしてしまう。政敵に異変を悟られる前に元に戻さなけれ ば日本が危ない!
  • 完盗オンサイト(玖村まゆみ)……小さい頃から高いところに登るのが好きだった主人公。工事現場のバイトをしている際、建設中の建物によじ登っているのを 見とがめられてしまうが、それがきっかけで、とんでもない依頼を受ける。それは、皇居によじ登って盆栽を盗むという依頼。刻一刻と変わる状況に瞬時に対応 しながら皇居に侵入した主人公を待ち受けていたのは……。
  • ゲート《冥門編 》(柳内たくみ)……銀座に異世界との接点が出現し、押し寄せてきた敵を自衛隊が迎え撃つシリーズの完結編。ひずみが生じ、接点である「門」が維持できなくなる中で、諸外国の思惑が交錯する。
  • 私と悪魔の 100 の問答(上遠野浩平)……妙なからくり人形から、次々と質問を受ける女子高生。これまでの価値観が次第に崩れていく。禅問答のようなこういう本を読んで、あれこれ考えるのもたまにはいいかも。
  • 隠し事(羽田圭介)……彼女の携帯メールを 1 回盗み見してしまったことにより生じる疑心暗鬼。ばれないように盗み見を繰り返す日々が始まる。友達に相談するも、本人に直接聞くことはできず、深みにはまっていく。日常生活でありそうな話を題材にしたストーリー。
  • 五龍世界 (WOOLONG WORLD) - 霧廟に臥す龍(壁井ユカコ)……災厄を見通す力を持つ少女ユギは、災厄の源として疎まれていた。そんな少女が、有名な道士に師事したり、変な牧師を助けたり、トラブルに巻き込まれながら成長していくファンタジー小説。
  • ヘルたん(愛川晶)……新米ヘルパーが居候した先、兼、介護を担当する老人は、実は往年の名探偵だった。身体が不自由なためにヘルパーを依頼している名探偵は、実は痴呆症でもある。痴呆であることを隠し続けながら名探偵ぶりを発揮する老人と、高校の頃の恋人と一緒に、介護と探偵の両軸でストーリーが展開していく。
今期で面白かった上位 3 位は、任侠病院、民王、完盗オンサイト。

任侠病院で病院再建を担うのは、善玉とはいえヤクザはヤクザ。組織を維持していかなければいけないし、住民との葛藤もある。その辺りの采配が見事。

民王は入れ替わりのドタバタ劇が面白いのと同時に、政治にも一家言ある骨太のストーリー。

完盗オンサイトはクライマーという普段触れない職業が題材になっているのが新鮮だった。登場人物もとがっている。



【 読み終わった本シリーズ 】

2011 年下半期に読み終わった本

【 読了分 】
  • 守護天使(上村佑)……鬼嫁にいびられる毎日を送る中年男子が、女子高生に恋をした。どうやらその子、異常な奴らに狙われているらしい。密かに警護を続けていくうちに、とんでもない場面に出くわした! 無償の愛は小さな命を救えるのか!? やばい場面なのに思わず笑ってしまうコミカルさを持ちつつも、心にじんわりくる作品。映画化もされているようだ。
  • ログ・ホライズン《第 2~4 巻》(橙乃ままれ)……オンライン PRG の中に閉じ込められてしまった主人公達がサバイバルするシリーズの続編。悪徳ギルドからの双子救出をきっかけとして、街全体の希望を取り戻そうとする主人公・シロエ。街の発展と共に、NPC との交流も深まっていく。そんな折り、異常な数の敵が出現! 混乱の戦闘で、パーティーメンバーが命を落とす。普通なら生き返らせるのだが……!?
  • ゲート《動乱編、総撃編》(柳内たくみ)……銀座に異世界との接点が出現し、押し寄せてきた敵を自衛隊が迎え撃つシリーズの続編。敵帝国を一気に壊滅する火力を誇る自衛隊も、ゲリラ戦法には手を焼く。
  • 龍の黙示録《無印、東日流妖異変、水冥き愁いの街、魔道師と邪神の街、永遠なる神の都 上》(篠田真由美)……鎌倉に居を構えるオカルト小説家の秘書になった主人公。わけのわからない取材を追っていくうちに、先生が吸血鬼であることを知る。普通のイメージとはだいぶ違う吸血鬼だが、キリストの血を吸っているので敵が多い。姫神に魅入られた主人公と共に、ローマやヴァチカンと渡り合う。
  • 召喚士「行けっ!コカトリス!!」《第一部~第五十部》……出オチ一発芸のはずが、めくるめく展開を見せていく Web 小説。孤児の召喚士が魔導士らとパーティーを組み、冒険を繰り広げる。大きな橋や炎の山での戦い、離散……。窮地を戦術の巧みさで乗り切ったり、魔法などの理論がちゃんと説明されたりと、読んでいて面白い。
  • やる夫がリアルで戦うようです。……勇者になったやる夫が魔王の城を目指す Web 小説。果てしなく弱い勇者が徐々に覚醒していく。ラストは意外な結末!?
今回はラノベ系が多い。次回もそうなりそう。





2011 年上半期に読み終わった本

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【 読了分 】

  • テンペスト《上下巻》(池上永一)……琉球王国の危機に、一人の少女が生まれる。ずばぬけた頭脳で役人試験を突破するが、政治の世界は女子禁制。宦官と偽って仕官する。島流しの逆境も乗り越え、時には男、時には女として琉球を導く大長編!
  • ログ・ホライズン《第 1 巻》(橙乃ままれ)……オンライン PRG の中に閉じ込められてしまった主人公達がサバイバルする。「コマンド一発」とはいかないリアルな行動に戸惑いながらも、鋭い戦術で勝利を勝ち取っていく。
  • D 列車で行こう(阿川大樹)……廃線寸前のローカル鉄道に魅せられた一般人が、お節介にも鉄道会社の経営再建に乗り出す。数々のイベントを工夫して集客する中で、社員・地元民・遠くの若者など、いろんな人の「楽しみ」を掘り起こしていく。
  • ジェットコースターにもほどがある(宮田珠己)……ジェットコースターに乗りに行くために海外にまで行ってしまう、ジェットコースターマニアの体験記。ノリの良い文体とわけのわからないこだわりに、思わず笑ってしまう。スーパーマンのようなスタイルで飛んでいくジェットコースターなど、さまざまなタイプやうんちくが紹介されており、乗りに行きたくなる。
  • 名前探しの放課後《上下巻》(辻村 深月)……学校の誰かが自殺する。自殺直後から 3 ヶ月前にタイムスリップしたので、自殺は確実なのだが、誰が自殺するかは覚えていない……。自殺者を発見し、自殺をやめさせるために絆を作っていく。最後の急展開を含め、常に目が離せない作品。
  • ふたりの距離の概算(米澤穂信)……突然部活を辞めてしまった新入生。仮入部してわずかの期間、彼女に一体何があったのか? マラソン大会というわずかな時間で推理を繰り広げる主人公。思考、そしてタイミング。時差スタートのマラソンでうまく彼女に接触しなければ……。
  • 華麗なる欺き(新堂冬樹)……詐欺は芸術。スマートに欺くことをモットーにしている主人公が、マリー・アントワネットの首飾りに目を付けた。ところが、調査を進めるうちに、別の大物詐欺師も同じお宝を狙っていることが判明。詐欺師同士、そして、コワ~いヤクザなども入り乱れての争奪戦。果たして、ポリシーを貫き通しながらお宝をゲットできるのか?
  • 暴走ボーソー大学(山之口洋)……お気楽極楽な大学が、突然閉鎖に。卒業できなきゃ就職もままならない。どうにか存続させられないのか? しかしどうやら、この廃校騒動には裏がありそうだ。土地に絡む莫大な利権。1 つの学校だけで終わる話では無い。どう立ち向かう?
  • 放課後はミステリーとともに(東川篤哉 )……霧ヶ峰涼というエアコンみたいな名前の探偵部員が主人公のミステリー短編集。霧ヶ峰涼のトンデモ推理の後に真実が明かされる二段構えの謎解きになっている。ボケ要素多数あり。
今期はどれも面白かった。なかでもテンペストはスケールも大きく読み応えがあり、今期の本格小説ではベスト。名前探しの放課後は途中経過も最後の急展開も引き込まれる。ふたりの距離の概算はキーマンに 1 度ずつしか接触できないというタイミングのシビアさがスパイスになっている。

【 途中でやめた 】

1 つくらいあった気がするけど忘れた。

【 過去に読んだ作品 】



『D 列車でいこう』読了

『D 列車でいこう』 阿川大樹(著)/徳間書店(刊)

廃線寸前のローカル鉄道に魅せられた男女 3 人が、経営再建に乗り出す。といっても社員ではなく、善意のお節介焼き屋さん。

放漫経営ではなく、最高レベルの経営効率を実現しているのに赤字なので、再建は容易ではない。何しろ過疎なので、利用者があまりにも少なすぎる。しかも東京から来た 3 人組なんて胡散臭く受け取られるので、肝心の鉄道会社の協力が得られない。

そんな中、「金を掛けずに人を呼ぶ」施策を次々と打ち出すことにより、外部から利用客を呼び込んでいく。イベント切符で乗車するお客さんが増えてきたのを見ると、鉄道会社も少しずつ効果を実感していく。

地元のおばあちゃんに野菜の車内販売をしてもらう、という試みは、それ自体は小さなステップ。しかし、イベントの時にはお弁当も販売され、店の無い田舎においては、利用客にとって貴重な食料源となる。生活にハリが無かったおばあちゃんにとっては、工夫次第で商品が売れて楽しい仕事ができた。

他にも、芸術家の卵や、地元の大工さんなど、登場人物のささやかな夢が、ローカル鉄道を軸にかなえられていく。それとともに鉄道再建も軌道に乗っていくという、温かみのあるストーリーで、楽しめる。


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