『D 列車でいこう』 阿川大樹(著)/徳間書店(刊)

廃線寸前のローカル鉄道に魅せられた男女 3 人が、経営再建に乗り出す。といっても社員ではなく、善意のお節介焼き屋さん。

放漫経営ではなく、最高レベルの経営効率を実現しているのに赤字なので、再建は容易ではない。何しろ過疎なので、利用者があまりにも少なすぎる。しかも東京から来た 3 人組なんて胡散臭く受け取られるので、肝心の鉄道会社の協力が得られない。

そんな中、「金を掛けずに人を呼ぶ」施策を次々と打ち出すことにより、外部から利用客を呼び込んでいく。イベント切符で乗車するお客さんが増えてきたのを見ると、鉄道会社も少しずつ効果を実感していく。

地元のおばあちゃんに野菜の車内販売をしてもらう、という試みは、それ自体は小さなステップ。しかし、イベントの時にはお弁当も販売され、店の無い田舎においては、利用客にとって貴重な食料源となる。生活にハリが無かったおばあちゃんにとっては、工夫次第で商品が売れて楽しい仕事ができた。

他にも、芸術家の卵や、地元の大工さんなど、登場人物のささやかな夢が、ローカル鉄道を軸にかなえられていく。それとともに鉄道再建も軌道に乗っていくという、温かみのあるストーリーで、楽しめる。